2022年3月3日6 分

FDM vs.SLA vs.SLS:3Dプリント技術の比較

最終更新: 2023年1月24日

Additive Manufacturing(AM技術)、及び3Dプリント技術は低価格、製造時間の短縮、そしてこれまでの製造過程の限界を超えるきっかけとなりました。

製造におけるコンセプトモデルやラピッドプロトタイプを用いた機能試作をはじめ、治具や固定具、または最終製品の部品まで、3Dプリント技術は幅広い用途で使用されています。

ここ数年で高精度な3Dプリンターは以前より安価になり、そして使用が容易なものも増え、信頼性が増した存在になりました。

その結果、現在では3Dプリント技術は様々なビジネスで活用できるものとなる一方で、

数多くの3Dプリンターの中から自身の用途に適した一台を選ぶのが難しくなってきています。

様々な3Dプリント技術のうち、どれが自身の用途に適しているか、どのような素材が使用可能なのか、そしてどのような設備や事前準備が3Dプリンターの導入に必要なのか...。

他にも3Dプリンターにかかるコストや費用対効果など、様々な疑問が3Dプリンターを選ぶ際に出てきます。

このような疑問を解決するために、この記事ではFDM, SLA, SLS方式という、3種類の樹脂を用いた3Dプリント技術を深く掘り下げてみたいと思います。

Fused Deposition Modeling (FDM方式):熱溶解積層法

FDM方式はFFFとしても知られており、趣味として3Dプリンターを使用する方にも使用されており、幅広い業界へ普及しています。

FDMの3Dプリンターは熱可塑性の樹脂を溶かし、先端にあるノズルから一層ずつ積み重ねるように出力されて造形が行われるものです。

FDM方式ではABSやPLAといった一般的な熱可塑性樹脂が使用されています。

これらの材料やFDM方式の技術はコンセプトモデリングやシンプルな部品の試作を低価格で抑えたい際に適しています

FDM方式で造形された部品には、目視で確認できるほどの線(積層痕)が残ることがあり、複雑な形を出力した際にはその精度の低さが垣間見えます。

上記の写真はStratasys uPrint社の工業用FDM方式3Dプリンターを使用して制作したものです。(機械の価格は$15,900、日本円にして約180万円)

FDM方式はSLAやSLSと比較した際に最も低い水準の解像度と精度を備えており、複雑な形をした物を造形するには不向きな方式です。

FDM方式で造形した物の品質を高めようとすると、薬品や機械を使用して表面を磨く必要性が出てきます。

工業用のFDM方式3Dプリンターだと、一般的なFDM方式プリンターと比較して、前述したような問題を少し和らげることができ、さらには工業用の熱可塑性樹脂を使用することが可能になります。しかし、価格は一般的なFDM方式プリンターと比較して大幅に高くなってしまいます。

▲FDM方式での造形物(左)は、SLA方式のもの(右)と比較して、複雑な設計や機能を求められる部品の造形は苦手とされています

Stereolightography (SLA方式):光造形法

SLA方式は世界で初めて開発された3Dプリント技術であり、発表年は1980年代にまで遡ります。

そして、3Dプリントを生業としている人々の間では現代でも人気な方式です。

SLA方式はレジンに光を当てることで樹脂を硬化させる、光重合と呼ばれる現象で造形を行う方式になります。

▲SLA方式についての説明動画

SLA方式で造形された部品は最高水準の解像度と精度を持ち合わせており、樹脂を用いる3Dプリント技術の中では最も細度が高く、表面の仕上がりも滑らかです。

これらもSLA方式の十分な強みではありますが、主となる強みはこれではなく、使用できる材料(レジン)の豊富さにあります。

多くの材料メーカーが一般的なレジン材料の光学的・機械的・熱的性質を工業用途に使用される熱可塑性樹脂にマッチさせ、革新的なSLA方式用のレジン開発をおこなってきました。

SLA方式で造形された部品は他のものと比べてエッジが立っており、滑らかな表面も持ち合わせています。

FDMで顕著であった積層痕はSLA方式では最小限に抑えられているのも大きな特徴です。上記写真に使用されている部品はFormlabs社の SLA方式3Dプリンター 「Form 3」を使用して制作されたものになります。 ※現在は「Form 3+」として更にも精度も造形スピードも向上しています

SLA方式は複雑な形状で高い精度が必要な試作に向いており、モールドの型や機構を制作するのにもおすすめできるものとなっています。

SLA方式の3Dプリンターは、工業・プロダクトデザイン・歯科・宝飾・建築のモデル・教育など、多くの業界で使用されています。

▲デスクトップ型3Dプリンター「Form 3+」の詳細はこちら

▲「Form 3+」の約5倍のビルドボリューム「Form 3L」の詳細はこちら


Selective Laser Sintering (SLS):粉末焼結積層造形法

SLS方式3Dプリント技術は産業界にて最も普及しているものであり、様々な業界で機能部品を制作するエンジニア達によりその性能が認められています。

SLS方式3Dプリンターはポリマー粉末を高出力レーザーで焼結する仕組みになっています。焼結されなかったポリマー粉末はサポートの役割を担っており、この粉末のおかげで自らサポートの設計を行う必要がなく、内面の装飾、刻み目や薄い壁などの複雑な形状も出力が可能になります。

SLS方式で出力された製品は機構や機能面で優れており、モールドで製作されたものにも引けを取りません。

SLS方式で造形されたものの表面は少しきめの粗いものとなっていますが、肉眼で確認のできるような積層痕は残りません。上記の部品はFormlabs社のSLS方式3Dプリンター 「Fuse 1」を使用したものになります。

SLS方式3Dプリンターで最も使用される素材はナイロンです。ナイロンは軽く、しなやかでありながらもしっかりとした強度を保持する特徴があり、衝撃、化学薬品、熱、紫外線、水や土に対する耐性をも持ち合わせています。そのため、工業用の熱可塑性樹脂としてとても優れている素材として人気です。

一つ当たりの制作コストの低さ、生産性の高さ、そしてナイロンをはじめとした高性能な素材が合わさることによって、SLS方式3Dプリンターは機能試作やモールドの代用、そして小ロットでの生産を必要とするエンジニアやデザイナーに愛されています。

▲Formlabs社初のSLS方式3Dプリンター「Fuse 1」の詳細はこちら


FDM, SLA, SLS の比較

それぞれに強みと弱み、そして稼働させるための必要条件があり、導入する際には、使い道やビジネスによっても左右されるため、これらの要素も考慮しなければいけません。

こちらにある表はそれぞれの技術的な特徴や導入の際に必要な要件などをまとめたものになります。

FDM, SLA, SLS 3Dプリントにかかる費用と費用対効果

その3Dプリンターはこれから行おうと考えているビジネスに適しているかどうか、費用と費用対効果が3Dプリンターの購入を考えた際に行きつく最初の疑問だと思います。

そしてFDM, SLA, SLSを問わず、3Dプリンターそのものの価格はこの数年で劇的に安くなっています。

3Dプリントにかかる費用というのは、本体にかかる費用を考えるだけではなく、一つ当たりの造形コストに大きな影響を与える素材やそれらを運用する際にかかる人件費なども考慮しなければいけません。

以下の表がリソースやコストなど、それぞれの方式で費用の詳細です。

▲左からFDM、SLA、SLSで造形したスキーゴーグルのフレーム

本記事は、Formlabs公式サイトのものを和訳したものとなります。

引用元:Formlabs公式HP "3D Printing Technology Comparison: FDM vs. SLA vs. SLS”(英文)

https://formlabs.com/blog/fdm-vs-sla-vs-sls-how-to-choose-the-right-3d-printing-technology/


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