Form 2 導入事例

さまざまな現場でどのようにForm 2が活用されているのかをご紹介します。

取材協力 : 株式会社A-Traction

光造形方式のデスクトップ3Dプリンタ「Form 2」。高い造形品質や素材の豊富さが特徴ですが、実際にはどのような場面で利用されているのでしょうか? 今回は、千葉県柏市に位置する国立がん研究センター東病院 NEXT医療機器開発センターにある株式会社A-Tractionを訪ね、代表取締役社長の安藤岳洋工学博士、テクニカルマネージャーの粟野啓太氏にお話を伺いました。

株式会社A-Traction

代表取締役社長 工学博士

安藤 岳洋 Takahiro Ando(左)

株式会社A-Traction

テクニカルマネージャー

粟野 啓太 Keita Awano(右)

今日は株式会社A-Tractionのご紹介と、導入されたForm 2についてお話を伺っていきたいと思います。
よろしくお願いします。

粟野氏: A-Tractionの概要を説明します。弊社は2015年8月に設立した、まだ3年ほどの会社です。元々は社長の安藤とがんセンターの伊藤先生、メドベンチャーという医療系ベンチャーキャピタルの出資で設立しました。現在は6名ほどのメンバーで構成されるスタートアップ企業となります。

医師不足を解決する 手術支援ロボットの開発

粟野氏:A-Tractionという会社名は、「ええ(感じの)トラクション」から名付けられました。トラクション(臓器を引っ張ること)が手術において最も重要だと言われているからです。 私たちは、増加し続ける癌に対して医師の数が横ばいで人手が足りない状況となっている中で、腹腔鏡手術(お腹に小さな穴を開けて術具を挿入する手術)にフォーカスし、手術支援ロボットを開発しています。業界では先行する米国のdaVinciという手術用ロボットがあり、これが唯一成功していると言われています。 腹腔鏡手術では、お腹の中のカメラを持つだけなど、全く動く必要のない行為でも医師免許を持った先生のみにしか許されず、手術実施に最低でも3人の医師が必要になります。 手術中は、実際に切ったり縫ったりするのは主に3人中一人の先生で、他の二人は内視鏡(カメラ)を持ったり、臓器を持ち上げる・引っ張る(テンションをかける)という役割を担います。そして、その3人の先生のコミュニケーション・連携が手術の質に大きく影響します。例えば、連携がうまくいかないと、臓器にテンションがかからず電気メスで切れないといったことが起こり得ます。 これに対して弊社では『ANSUR(Another Surgeon)=もう一人の医師』というコンセプトで開発を進めています。

ANSURロボットアームの先端を腹部模型に入れて動かす様子。

ANSURの操作デモ

医師の動きをリアルタイムに 反映し、直感的な操作を可能に

粟野氏:daVinci等の既出のロボットは、ロボットとは別に少し離れたところに用意した、マスターコンソールと呼ばれる大きなコントローラで操作を行いますが、ANSURは、手術をする医師の横にロボットがあり、医師自身がその場で、自ら操作します。daVinciを知っている人からは、マスター コンソールがないのにどうやって操作するのかと聞かれますが、手術をする医師が持つ「術具」で操作をすることができるので、見えない糸で操るようなイメージで、ANSURを思い通りに操作することができることを目標に開発を行なっています。センサーを駆使し、医師の術具の動きを計算する独自の技術により、この思い通りの操作を実現しています。 通常の手術では、電気メスで切る際に、助手が10〜20分の間同じ姿勢で臓器を引っ張り続けるという過酷な作業が手術中絶えず発生しますが、このような過酷で単純な作業を、思い通りに動くANSURにやらせて、従来より少数の医師による場合でも、質の高い手術ができるようになることを目指しています。

医師の持つ術具でANSURを思い通りに操作できるようにすることが目標

先日、daVinciに正面から勝負を挑む日本の手術用ロボットの記事を読みました。

粟野氏:daVinci等はとても機能が高いけれど、本当にそこまでの機能が必要なのか?その価格の高さが病院や患者さんにとって優しいのかというところがあまり考えられていないことに気づき、直接競合するのではなく、彼らが考えていないセグメントを狙う戦略をとりました。

安藤氏:我々も当初はdaVinciに対してというところから入りましたが、検討を重ねるにつれ10年以上先行しているdaVinciに追いつけないことがわかりました。技術的にというよりも、医療機器だからこそ必要となるステップがあり、それを飛び越えることはできないのです。そこから、医療をよくするためのロボットはどうあるべきかというところに立ち返ってANSURのコンセプトができました。

大量に必要となる部品のプロトタイプはForm 2に

ここからは本題のForm 2についてお話を聞きたいと思います。ANSURのコンセプトを実現するためにForm2はどのように貢献しているのでしょうか。

安藤氏:ANSURには大量のメカ部品が必要となりますが、最終的な射出成形をする前のプロトタイピングをしたり、テスト用の治具を作ったりするためにForm 2を使っています。ギヤなどの駆動部品を試しに動かしてみたい時など、すぐに出力してすぐに試せるので大変重宝しています。私自身、大学生の頃から1000万円もするような3Dプリンターを使っていたので、ANSURを作るにあたって自然に3Dプリンターを導入しました。Form 2はその高額な3Dプリンターと比べても遜色がなく、競合製品と比較しても安心感があります。我々はスタートアップ企業なので、限られたリソースでいかに早くお金をかけずに試作するかというのがとても重要です。コストパフォーマンスの高いForm 2の導入は必然だったと言えます。 切削に比べて、コストは1/10程度、時間も短縮できるので、あっという間に投資回収ができました。 

粟野氏:最初の頃はFDMを使っていましたが、最終的に射出成形することを意識し始めた時に、より精度の高いものが必要となってきました。後で射出成形に置き換えようとするとスタートの設計が変わってきたりと影響が出てきたからです。

切削でやろうとしてもできないといった形状のものでも、Form 2を使った造形なら、最初から射出成形を見込んだ形にすることができるので、Form 2の導入後は設計方法も変わりました。

大量のメカ部品を何度も試作するような時に、短時間で高いクオリティで 造形できるForm 2は最適

Form 2で造形されたロボットアームの一部。

使用レジン:グレー、ブラック

ブラックレジンで試作されたロボットアームのヘッド。 A-Tractionのロゴマークもしっかり表現されている。

ロボットアーム各所にForm 2による造形物が使用されている。 中央の青く光るLED部分は、クリアレジンで造形された。 使用レジン:ブラック、クリア、グレー

Form 2で造形したタイミングベルト用の駆動部品。 試作レベルとしては十分な精度・強度がある。

株式会社A-Tractionでは、3Dプリンターメーカーが思い描いたラピッドプロットタイピングが実践され、十分な効果が発揮されていました。医療をよくするために考えられたANSURで手術支援ロボットの世界にイノベーションが起きることを期待しています。今日はありがとうございました。 

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