【事例紹介】サイン業界で3Dプリントを実用化。Form 4と高強度レジンで価値創造を加速する|株式会社KOYAMA
- 5月14日
- 読了時間: 10分

株式会社YOKOITO運営のYokoito Additive Manufacturing(YAM)が導入支援を行う光造形方式3Dプリンター「Form 4」。その活用事例として、株式会社KOYAMA(以下、KOYAMA)の取り組みを紹介します。
東京都足立区に拠点を構え、看板・サインの企画から施工までをトータルで手がけるKOYAMA。同社では、3Dプリンターを活用したサイン開発のラインアップに、新たに「Form 4」を導入しました。次世代の光造形技術により、造形速度と材料選択の幅が大きく向上した点が、導入の決め手となりました。
「強度が求められるサインの開発に耐えうる、丈夫な素材が扱えるようになりました。デザインから試作まで、開発のサイクルが早くなり、新しい表現や付加価値の高い提案にもつながっています」
そう語るのは、KOYAMA 製作部 製作課 3D開発デザイナーの石川馨さんです。本記事では、サイン業界におけるAM(アディティブ・マニュファクチャリング)の現在地と、Form 4がもたらした変化について伺いました。
取材ご協力:
株式会社KOYAMA 製作部 製作課 3D開発デザイナー
石川 馨 様
ワンオフから公共施設まで。まるごと手がけるサインカンパニー
——御社の事業内容について教えてください。
KOYAMAは1964年の創業以来、60年以上にわたりサイン(看板)の企画・設計から製作、施工までを一貫して手がけてきた企業です。業務範囲は幅広く、建物の顔である商業施設の看板や案内・ホテル、病院や学校といった公共性の高い施設など、多種多様な空間のサインを担っています。
2013年には社内に製作部を設置し、現在はプロッターやレーザーカッター、UVプリンターに加え、水圧転写塗装ブースなどの設備を揃えています。職人による手仕事とデジタル加工を組み合わせることで、一品もののオブジェから大規模施設のサイン一式まで、幅広いニーズに対応できる体制が特徴です。

——3Dプリンターを導入したきっかけは何だったのでしょうか。
弊社が初めて3Dプリンターを導入したのは2019年です。当時、サイン業界における3Dプリンティングの活用事例はまだ多くありませんでしたが、新しい表現手法としての可能性に着目しました。
例えば、職人が金属板を曲げて作る「箱文字」や、有機的で複雑な形状のオブジェは、多くの工数と熟練の技術を必要とします。こうした領域に3Dプリンティングを取り入れることで、コストと表現の両面で付加価値を生み出せると考えました。
最初に導入したのは、透明度の高い造形やフルカラー表現が可能な大型機です。それまで画面上の3Dデータや図面でしか確認できなかった色味や質感を、実物大のモックアップとして提示できるようになったことは、大きな進歩でした。

——3Dプリンターを活用した新プロジェクト「3DOMI」も展開されていますね。
はい。3Dプリンターならではの表現を追求するために「3DOMI」を立ち上げました。「思わず3度見してしまう」ような、人々の記憶に残るデザインをコンセプトに掲げ、独自のアイテム開発に取り組んでいます。Instagramのアカウントでも作例を公開しているので、ご覧いただけたら嬉しいです。
昨今はユニバーサルデザインへの関心が高まり、誰にとっても分かりやすく、かつ空間に調和するピクトグラムの需要が増えています。3Dプリンティングによる立体的なサインは、視認性と意匠性を両立させる手法として大きな可能性を感じています。
もちろん、サイン制作の現場全体で見れば、3Dプリントの活用はまだ主流とは言えません。しかし、多品種小ロットへの対応や複雑形状の再現性など、確かな優位性があります。金型レスによるコストメリットや材料ロスの少なさも含め、既存の工法を補完し、さらに発展させる手段として、試行錯誤を続けています。
強度とコストの課題を解消する「Form 4」の導入
——今回、新たにForm 4を導入された理由を教えてください。
最初に導入したフルカラーの3Dプリンターは、デザイン提案やワンポイント活用で大きな役割を果たしていましたが、実用面での課題も見えてきたんです。
私たちの手を離れ、施設へ設置するサインとして考えると、どうしても強度が不足していました。たとえ最終製品は金属で製作する計画であっても、開発・試作の段階である程度の耐久性は欠かせません。試作品が脆すぎると、実際の現場を想定した検証ができず、実験として成立しないからです。ABSの代替として成立する程度の物性を実現できないかと考え、次の一台を探していました。

——より実践的な用途にかなう装置として、Form 4を選ばれたのですね。
そうですね。以前から展示会などでFormlabsの光造形機には注目していました。実際にForm 4を使ってみると、複雑な形状の再現性と表面の滑らかさがさらに向上していることに驚きました。
家庭用電源で稼働する手軽さや、オフィス環境に馴染む外観など、運用面での取り回しの良さも魅力です。また、コストと性能のバランスにも優れており、社内へのスムーズな導入につながりました。
——素材の物性や、サポート体制についてはいかがでしょうか?
強度は「Tough 2000 Resin V2」などを活用することで、私たちが求める水準を確保できています。他社にも同等の性能をうたう材料はありますが、材料供給の安定性やサポート面で不安が残るケースもあります。その点、国内に技術拠点を持つYAMのサポート体制があることは、継続的に運用していく上での安心材料になりました。

——Form 4の造形物は、具体的にどのようなシーンで活用されるのでしょうか?
ホテルや公共施設などの案件では、同一形状のサインを数十個から数百個単位で必要とするケースが多くあります。Form 4のスピードと安定性があれば、少量から中量程度の製作には十分に対応可能で、追加発注にも柔軟に応えられます。
「3Dプリンターは極小ロット向け」というこれまでの前提にとらわれず、中量産までカバーできる実務的な選択肢として、活用の幅を広げていけると考えています。

——メッキや塗装を施した造形物は、まるで金属のような質感で驚きました。
ありがとうございます。協力会社とも連携しながら、Form 4での試作を進めています。単に出力するだけでなく、看板製作で培った塗装や表面処理を組み合わせることで、3Dプリント品に多彩な表情を持たせられるようになりました。
運用面では、専用ソフト「PreForm」によるサポート生成の自動化が便利で、データ作成の工数が大幅に削減されました。事前に材料費や造形時間を把握でき、カートリッジ式でレジン交換も容易なため、複数のプロジェクトを効率よく並行できています。

素材とデザインを掛け合わせ、より実用的なサインを目指す
——素材の強度については、どのように検証されていますか?
高強度素材としては「Tough 2000 Resin V2」を中心に、「Tough 1500 Resin V2」なども用途に応じて使い分けています。いずれも耐衝撃性と、程よい靭性・剛性のバランスが取れている材料です。
以前、「Tough 2000 Resin V2」の出力品を約3メートルの高さから落とすテストを行いましたが、割れることはありませんでした。もちろん極端な衝撃が加われば破損する可能性はありますが、実用レベルの強度には達していると感じています。
また、素材のアップデートも大きなメリットです。Tough 2000 ResinのV1.1では削ると刃に「ねっとり」とまとわりつく感覚がありましたが、V2では「さらっ」とした切削感に変わり、後加工がスムーズになりました。新しい素材が出るたびにテストを行い、その進化を確認しています。

——モデルの形状にも、現場を見据えた工夫が見て取れます。
現場は施工時間が限られるため、3Dデータ側でパーツ数を減らし、構造を簡略化する工夫を行っています。将来的には荷重シミュレーションによる形状最適化も取り入れたいですね。こうした設計の裏付けがあれば、ゼネコンや設計事務所に対してもより説得力のある提案ができるようになります。

——社内の階数表示はForm 4製とのことですが、これも検証の一環でしょうか?
はい。3Dプリントアイテムの最終製品化を見据え、紫外線や照明の熱に対する耐久性を、自社で実際に使用しながら確認しています。
パイプを曲げたような形状もありますが、従来の金属加工ではパイプ径が規格に制約され、曲げや溶接には高度な技術が必要でした。その点、3Dプリントでは規格や加工難度の制約にとらわれず、自由度の高い造形ができるんです。
——3Dプリント品であることを感じさせない、綺麗な塗装が施されていますね。
最終製品として成立させるには、やはり出力後の塗装工程が不可欠です。看板製作で培ったノウハウを応用し、研磨やブラスト処理、サーフェイサーとトップコートの複数回塗布など、下地作りを徹底しています。下地の仕上がりが最終的な品質を大きく左右するため、この工程には特に注意を払っています。

——仕上げは全て自社で行なっているのでしょうか?
案件によってはパートナー企業の協力を仰ぎます。メッキ加工を依頼している工場は、もともと自動車関連がメインでしたが、新しい素材への挑戦を面白がって取り組んでくれています。試行錯誤を通じて「この素材にはこの処理」という知見が溜まってきており、3Dプリント品が一つの信頼できる「素材」として確立されつつある手応えがありますね。
データが資産になる時代へ。3Dプリントが変えるビジネスモデル
——3Dプリントを導入したことで、他にはどのような変化がありましたか?
表現の幅が広がっただけでなく、新しいビジネスの種も生まれ始めています。象徴的だったのは、メーカーで廃番になったアルミサッシ用固定具の復元を、とある現場から依頼されたことです。
通常であれば金型の再製作に多大なコストがかかりますが、現物を3Dスキャンして起こしたデータを元に、Form 4で必要な分だけ造形して対応できました。修繕・復元という切り口は、自分たちにとっても大きな発見でした。


——「3Dプリントで課題を解決できる」という実績が、新しい依頼を呼び込んでいるのですね。
そうですね。データが「資産」として蓄積されていくことで、アフターフォローやリピート案件のあり方も変わってきました。
代表的なのは、寄附者の名前を記す銘板(ネームプレート)の案件です。最初にまとまった量を納品しましたが、基本となるデータを持っていれば、新しい寄附者が現れた場合でも、名前を差し替えて1点からすぐに対応できます。イニシャルコストを抑えながら柔軟に対応できる点は、クライアントにとってもメリットになっていると感じています。

——スピード感も含め、KOYAMAからの価値提案のバリエーションが次々に生まれているのですね。今後、トライしてみたいことはありますか?
より大型造形が可能な「Form 4L」や、粉末焼結方式の「Fuse」シリーズにも興味があって。既存工法と3Dプリントの強みを組み合わせながら、さらなる短納期化とコスト削減を追求していきたいです。素材のバリエーションとしては、サステナブルなリサイクル材の活用にも関心があるので、展示会でも情報を集めています。
3Dプリンターを活用すれば、外注して数日待つのではなく、その場でトライアンドエラーを回すことができます。サイン業界ではまだ新しいからこそ、アイデアを即座に形にし、試行錯誤を高速で繰り返すことが重要。うまく内製化を進めつつ、さまざまなパートナーと協力しながら、新しい価値を継続的に生み出していけたらと思います。
——私たちもご協力できれば幸いです。今日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!


長年培った看板製作の技術と、Form 4がもたらす試作・検証・再生産の新たなサイクル。KOYAMAの取り組みは、3Dプリントを単なる造形手段に留めず、ビジネスを拡張させる戦略的なツールへと昇華させていました。自由な発想と確かな仕上げの力が、これからのサイン業界を変えていく——そんな可能性を示す事例だと感じられました。
株式会社KOYAMA ホームページ|https://koyama-inc.jp/
3DOMI プロジェクトページ|https://koyama-inc.jp/business/3domi
3DOMI Instagram|https://www.instagram.com/3domi_koyama/



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