実験器具の製作開発で大学内研究室のニーズに応える、研究支援技術部の事例
光造形方式のデスクトップ3Dプリンター「Form 3」は、実際にはどのような場面で利用されているのでしょうか。
今回は、北海道大学 触媒科学研究所 技術部 第二研究機器開発班の向井 慎吾氏に導入の目的や運用方法、導入後の効果についてお話を伺いました。
取材協力:北海道大学 触媒科学研究所 技術部
#Form 3 #大学 #エンジニアリング #実験器具 #模型 #金属加工と合わせて
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Formlabsの3Dプリンター導入で仕事の幅が広がった
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強度の高さ、そして薬品への耐性や質感を評価
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Form 2をも上回るForm 3の精度の高さ
大学内の研究室をサポート
ー まずは、北海道大学での向井さんの役割についてお伺いできますか?
私は北海道大学 触媒科学研究所 研究支援技術部にて学内の研究室をサポートしています。
もう少し業務内容を詳しく言うと、実験器具の製作・開発・改良をおこなっている部門で、学内から実験器具製作の依頼を受けており、開発や製作をおこなっています。
金属加工では難しい複雑な形状の造形を、Form 2から
ー まず最初にForm 2を導入されたとのことで、導入前はどのような課題を抱えていたのでしょうか?
私たちは主に、旋盤・フライス盤・マシニングセンタなどの一般的な金属加工のマシンを用いて装置製作をしているのですが、それらの機械は金属等の塊から削り出すのは得意だとしても、複雑な形状の一体加工を不得意としています。
しかしながら、私たちも複雑な形状を一体成形で作りたいという場面もあります。また、ゴムなど柔らかい素材を加工する事も苦手としておりました。
そんな時に、現在使用している金属加工のマシンだけでは、対応が難しいので、3Dプリンターの導入を検討しはじめようとしました。
ただ、他の学部で他社の3Dプリンターを導入し上手く使いこなせなかった・強度が足りなかったなどの例があったので、しばらくの間、私の部門でも導入を見送っていたんです。
そんな中、当時はまだForm 3が発売されていなかったので、従来機であったForm 2を見つけ、Form 2で造形したものにおいては、どの方向から力を加えても同じような強度を出せるというところに着目して導入したという経緯があります。
Form 2で仕事の幅が広がり、期待から後続機Form 3の導入へ
ー Form 2の後継機として、Form 3が登場し、向井さんの部門でも導入いただきましたが、Form 3導入の決め手を教えてください
当初研究所では、「3Dプリンターってオモチャなのでは・・」という意見が結構多かったんです。
でもForm 2を導入したことによって、仕事の幅が広がり、ほぼ全ての研究室の要望に応えられるようになってきた。さらに工作室を利用している先生方は、Form 2で造形したものが思ったよりも強度が高く、薬品への耐性や、さらには質感がものすごく研究の上で有効なものだ、という認識が徐々に出てきたんです。
例えば、FDM方式(熱溶解積層法:以下FDM)の3Dプリンターだと、積層の目に反って剥がれるということもありますが、Form 2などの光造形3Dプリンターではそのような心配もなかった。
このようにForm 2を通して、光造形3Dプリンターの認識が徐々に変化していき、「Form 3が新しく出たのなら、それも導入してみては?」という話になり、Form 3の導入を決めました。
Form 3の精度の高さを体験、そして複数導入による効率化を実現
ー 導入時〜現在に至るまでの使用感はいかがでしょうか?
現在Form 2が2台とForm 3を1台導入しているのですが、圧倒的に精度はForm 3の方が良いと感じています。
私たちは金属加工をする上で、殆ど手動で作業で行っています。
”1点物”を作ることが多く、金属工作担当は私含めて2人しかいないということもあり、”技術のある職人さんが1点物を作る”というコンセプトで成り立っています。
とはいっても、まれに数十個製造して欲しいという依頼があるので、そういった時にForm 2とForm 3を同時に稼働させています。
このように、Form 2とForm 3で同じものを造形する時には、Form 3の方が精度が良い実感しますね。
例えば、私たちが金属加工したものに、Form 2とForm 3で造形したものを合わせる・はめる際に、Form 3の方はあまり調整しなくてもはまります。ネジを通す穴を造形した時もそうでしたね。ネジ穴をForm 3で造形して、金属の方に開けたネジ穴にあうかどうかも試しましたが、ズレは少なかったです。
そういった点で手間も省けますし、Form 3は扱いやすいなと感じています。
また、エラスティックレジン等で柔らかい素材の造形が出来る事でも仕事の幅が広がりました。
更なる学内研究サポート強化のために、様々な材料を試していきたい
ー 最後に今後どのようなことに使っていきたいかなど、お伺いできますか?
研究所で行う実験では、様々な化学薬品を使うので、強力な薬品に耐性のある材料を使ってForm 3で造形し、実験装置に直接組み込んでいきたいなと思っています。
現時点で非常に強力な酸やアルカリに浸すことはあまりないですが、将来的には多少の有機溶媒や薄い酸、アルカリに対してRigid 10Kで製作した製品を直接、実験装置に組み込む事を試してみたいと考えています。
これは研究室からも「薬品に強いものはないか」という要望があるので、いろいろな材料で試していきたいと考えています。
ー 本日はいろいろお話いただき、ありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。