はじめに
Formlabs社製3Dプリンター Form 3+ / Form 3B+ / Form 3L / Form 3BL でのメンテナンスのうち今回は「光学窓の清掃」を解説します。
とてもシンプルなメンテナンスなので、定期的な点検・実施をおすすめいたします。
光学窓の清掃とは?
Formlabs社のSLAプリンター(Form 3+ / Form 3B+ / Form 3L / Form 3BL)はレーザーユニット(LPU)を搭載し、機体内部に収納されています。
LPUの上部には「光学窓」があり、その窓からUVレーザーをレジンタンクに照射します。
その光学窓をIPAとPEC PADを使って清潔に保つメンテナンスです。
LPUは機体内部に搭載されているため、作業中不意に光学窓に触れてしまったり、レジンが落ちて汚れるなどはありません。
しかし、完全に密閉されているわけではないため、使用していくと埃が付着し、光学窓がキレイな状態ではなくなっていきます。
なぜメンテナンスは必要なのか?
光学窓が汚れていくと、照射するUVレーザーの光が拡散したり、光の照度が下がってしまいます。これにより、意図したとおりに積層ができなかったり、造形物が歪んでしまったり、プリント失敗の要因の一つになってしまいます。
プリント失敗を回避、解消するために光学窓の清掃メンテナンスは必要になります。
今回は、簡単な手順なため道具準備後の実作業時間を実際に時間を図りながら作業してみます。
メンテナンス手順について
作業前の準備
用意するもの
PEC PAD(Finish Kitに同梱)
IPA(イソプロピルアルコール) ※濡れ拭きする時はIPAのみ使用してください。他の溶剤、洗浄剤は使わないでください。
粉なしのニトリル手袋
ハンディライト(LEDライトや懐中電灯、スマートフォンなど)
エアブロアー
以上5点を用意してください。
まず、プリンターには何も装着されていない状態にしてください。
ビルドプラットフォームを外す
レジンカートリッジを抜く
レジンタンクを外し、専用タンクケースに入れ蓋をする
準備が整ったらタイマーをスタートします!
1.画面の操作
(1)タッチ画面左端のレンチマークをタップしてSETTINGS画面に移動します
(2)SETTINGS画面から Maintenance > LPU Replacement の順にタップします
(3)LPUが右側からプリンター中央に移動します
操作後、LPUを機体中央に移動させたら、機体のコンセントを抜き電源を落とします。
清掃時に指等の巻き込み防止のために、必ず電源は落とすようにしてください。
2.光学窓の状態確認
清掃のセッティングが終わればカバーを開け、まず光学窓の状態を確認します。
用意したハンディライトを使い、光学窓を照らしガラス面にホコリや、汚れがついていないか確認します。ライトをゆっくり左右上下に振りながら、色々な角度で確認してください。
3.ローラーホルダーの清掃
光学窓のガラス面の汚れを確認したら、ガラス面を拭く前にガラス側面にあるローラーホルダーを拭き上げます。拭き上げる時は、PAC PAD(ローラーホルダーはペーパータオルでも大丈夫です。)にIPAを数滴染み込ませて、拭いていきます。
ガラス面が汚れていない場合でも、ローラーホルダーは汚れていることはあるので、メンテナンス作業をしたら、必ず拭いておくことをお勧めします。
なぜローラーホルダーを拭くのか? ローラーホルダーはレジンタンクの底面部と直接触れ合っています。ローラーホルダーに汚れが付着しているとタンク底面部に汚れが移り、そしてまた別のレジンタンクや、別の機体のローラーホルダーに汚れが移っていきます。知らない間に汚れがピンポン状に広がってしまいます。 レジンタンク底面部の汚れは造形失敗の原因にもなるため、ローラーホルダー、レジンタンク底面部の清潔さを保っていくことは重要になります。
4.光学窓の清掃
汚れがある場合、清掃のパターンは大きく三段階あります。
(1)エアブロワーを使用して清掃
(2)PAC PADで乾拭き
(3)IPAを使用して濡れ拭き
(1)まずエアブロワーを使用して風でホコリを飛ばします。エアブロワーでホコリや汚れが取り除けない場合は(2)の手順で清掃してください。
(2)PAC PADを半分に折って、ガラス面より少し大きいくらいの幅に折りたたみ、乾拭きを行います。乾拭きでも取り除けない汚れがある場合は(3)の手順に進んでください。
(3)IPAをPAC PADに数滴染み込ませてから濡れ拭きを行います。濡れ拭き時の注意は、PAC PADをガラス面に押し当て、奥から手前へとゆっくりと動かし拭き取ることです。時間としては一回の拭き取りあたり30秒〜40秒ほどかけるようにしてください。
拭き取りに時間をかけるのは、ガラス面についたIPAの揮発した痕が残らないようにするためです。必ず、IPAを軽く染み込ませる程度で、ゆっくりと拭き上げてください。PAC PADは一度拭き取りを行ったら、折りたたんで別の面を用意してから次の拭き取りを行うことも光学窓の清掃のコツです。
拭き上げた後は、再度ハンディライトなどで光学窓の状態を確認します。汚れが取り除けていることが確認できたら清掃作業は終了です。
清掃後の起動
清掃後は、LPUを元の位置に戻します。
Form 3+のカバーを閉じる
電源ケーブルを本体に挿す
起動するまで待つ
以上になります。作業時に機体の位置を動かした場合は、機体の水平をとる作業をしてください。これでいつものプリント作業に戻ることが可能になります。
まとめ
以上が、Form 3+ / Form 3B+の光学窓清掃についての解説でした。Form 3L / Form 3BLでも同様の手順となります。今回私の実作業時間は3分50秒、前後準備を除く清掃作業だけであれば1分50秒でした!
旧機種Form 2の光学清掃を行った時は1時間以上かかり、それでも綺麗に造形できないときがあり、苦しい作業だなという印象でした。LPUを筐体内部に搭載したことにより、Form 3シリーズのメンテナンス性は既存機種と比べて格段に上がりました。
問い合わせフォーム
今回は、Form 3+ / Form 3B+の光学窓の清掃についての解説を行いました。Form 3シリーズは扱いやすく設計されておりメンテナンスもお手軽でかつ、清掃したら綺麗に造形ができるパフォーマンスに優れた機体となっております。3Dプリンターのご導入をご検討の場合はお気軽にお問い合わせください。
Comments