【素材紹介】「Flexible 80A Resin V2」で何が作れる?Form 4向け柔軟素材の特徴と活用アイデア

こんにちは!Yokoito Additive Manufacturing(YAM)広報です。
YAMでは、3Dプリンタや関連技術の研究をする「テクニカルリサーチ」という活動を行っています。日々の業務の中で浮かんだちょっとした疑問や問題を実験・検証し、得た知見を弊社3Dプリントサービスをはじめ、すべてのAMユーザーへ還元していきます。

今回は、FormlabsのSLA用素材「Flexible 80A Resin V2」を取り上げます。2026年6月にリリースされた新素材で「さまざまな用途に使えるのでは!」と社内でも話題になっていました。どんな素材なのか、前バージョンとの違いはどこにあるのか。公式のデータと試作品で検証していきます。
SLA用エラストマー素材「Flexible 80A Resin V2」

YOKOITOでの販売ページはこ¡ちら
Flexible 80A Resin V2は、FormlabsのSLA方式3Dプリンタ「Form 4」シリーズ(Form 4 / Form 4B / Form 4L / Form 4BL)向けに開発されたエラストマー材料です。
名前にある「80A」は、ゴムなどの硬さを表すShore A硬度に由来。80Aの鋳造ウレタンやTPU、硬質ゴムに近い外観や手触り、機能性を備えています。ゴムのように曲げたり伸ばしたりできる一方で、ある程度しっかりとした硬さがあるのも特徴です。

一言でいえば、「やわらかいのに、しっかり戻る」素材。その特性を活かせば、手に持つプロダクトのグリップやカバー、部品同士の隙間を埋めて密閉するガスケットなど、柔軟性が求められる機能パーツを3Dプリントできます。
Formlabsが公開している動画でも、エアダスターやエキスパンダーなど、柔軟性を活かした造形例がたくさん登場。やわらかいだけでなく、変形させたり、繰り返し力を加えたりする用途にも使えることがイメージできます。
前世代からスペックが大幅進化

Flexible 80A Resin V2は、前世代のV1.1から性能が大きくアップデートされています。まず注目したいのが、見た目と手触りの変化。半透明のクリアカラーだったV1.1に対して、V2はベタつきのない滑らかな表面と、マットブラックの色合いへと変わりました。
※Form 4世代プリンタ向けのFlexible 80A Resin V1.1は、2026年12月31日以降、在庫がなくなり次第YOKOITOでの販売が終了となります。
性能面も大きく進化しています。メーカー公表値では、V1.1と比較して引裂強度は約2倍、破断伸びは約2倍、反発弾性は約4倍、屈曲疲労は約5倍に向上しています。
項目 | Flexible 80A V2 | Flexible 80A V1.1 | キャストウレタン* |
Shore硬度 | 83A | 79A | 80A |
引裂強度 | 28 kN/m | 13 kN/m | 34.5 kN/m |
破断伸び | 230% | 131% | 233% |
反発弾性 | 56% | 13% | 54% |
特に注目したいのが、反発弾性が13%から56%へ向上したこと。単にやわらかく曲がるだけではなく、変形させたあとに元の形状へ戻る力が大きく高まっています。
また、破断伸びも131%から230%へ、引裂強度も13 kN/mから28 kN/mへ向上しました。一方、比較対象となるキャストウレタンの引裂強度は34.5 kN/mとV2を上回っています。そのため、あらゆる用途でそのまま置き換えられるわけではありません。
それでも、柔軟性や復元性を備えたパーツを、3Dプリントならではの自由な形状で直接造形できることは大きなメリットといえるでしょう。
質感と柔軟性を活かした造形事例
Flexible 80A Resin V2は、精密機器を保護する柔らかなインサートや固定具、パッド、グリップなど、機能確認用の試作から実用部品まで幅広く活用できます。特に、対象物の形状に合わせて変形したり、衝撃を受け止めたり、繰り返し動かしたりする用途では、その特徴を活かせそうです。
そうした実用品への展開をイメージしながら、柔軟性や反発弾性を確かめられる3種類のサンプルを造形してみました。
サンプル① 工具のグリップカバー

まずは、工具に取り付けるグリップカバーです。
Flexible 80A Resin V2の伸縮性を利用し、木製の柄にかぶせて使用する形状にしました。表面にはスタッズ状のテクスチャを追加。柔らかな素材でありながら、細かな凹凸もしっかりと造形され、エッジの立った仕上がりになっています。
実際に握ってみると、マットな表面と凹凸によって、硬い樹脂とは異なるしっとりとした感触が伝わってきました。

さらに端部には、工具を吊り下げるためのフックを一体造形しました。グリップと機能部品をひとつのパーツとして作れるため、こうした形状を応用すれば、ユニークな製品カバーやアタッチメント、ケースなどにも展開できそうです。
サンプル② 変形してフィットするフタ


続いて、ジョウロの2つの開口部をふさぐためのパーツを作りました。
細い注ぎ口には、ハニカム状の筒をかぶせ、その先端にフタを取り付けています。筒部分を網目状にすることで、太さが一定ではない注ぎ口にも、形を変えながらフィットする構造にしました。実際に装着してみると、その柔軟性が発揮され、太い部分もしっかりとカバーできました。

少し大きめに作ったフタも、小さな注ぎ口にぴったりと収まりました。筒とつながる細い部分も自由に曲げ伸ばしでき、素材の柔軟性を実感できます。

広い開口部には、スリットを設けた円形のフタを作りました。スリットをフチに沿わせながら開口部にはめ込み、内側に引っかけて固定します。取り外す際もしなやかに変形するため、大きな力は必要ありませんでした。
水密性まで検証していませんが、着脱可能なキャップやカバーを、柔軟な構造ごと3Dプリントできることを確認できました。寸法や厚み、形状を用途に合わせて調整すれば、端子や機器を保護するキャップやカバーなどにも応用できそうです。
サンプル③ 繰り返し折りたためるジャバラ構造

最後は、Flexible 80A Resin V2の「変形しても戻る」という特徴を、より分かりやすく試してみます。空気入れや折りたたみ式のコップをイメージし、径の異なる段を連続させたジャバラ状の形状を造形しました。

上から押し込んでいくと、ペコン、ペコンと各段が内側へ折りたたまれていきます。押し込んだ状態から引き伸ばすと、再び元の形状へ。繰り返し変形させても形を保つことができます。
こうした動きには、反発弾性が大きく向上したV2らしさがよく表れています。折りたたみ構造や押し込んで動かす機構など、素材そのものの柔軟性と復元性を、パーツの機能として活用する設計にも可能性がありそうです。
まとめ
新登場のFlexible 80A Resin V2。前世代から性能が大きく向上し、見た目も一新されたことで、さまざまな用途での活躍が期待できる素材です。
柔らかいだけでなく、変形させながら機能を持たせられるのも大きな特徴。対象物に沿ってフィットするカバーや、変形させて着脱するフタ、繰り返し折りたためる構造など、柔軟性や反発弾性を形状そのものの機能として活かせます。
社内でも「インソールが作れそう」「パッキンの試作に使えそう」といったアイデアが次々と出ている新素材。柔軟なパーツの試作や、これまで硬質樹脂では難しかった形状を検討している方は、ぜひ新たな選択肢としてFlexible 80A Resin V2をチェックしてみてください!
執筆:Yoshihiro Asano



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