【素材紹介】「Tough Resin」3種を比較!Form 4シリーズ向け高強度材料の特徴と選び方

こんにちは!テクニカルチームです。
3Dプリンタや関連技術の研究をする「テクニカルリサーチ」という活動を行っています。日々の業務の中で浮かんだちょっとした疑問や問題を実験・検証し、得た知見を弊社3Dプリントサービスをはじめ、すべてのAMユーザーへ還元していきます。
今回は、FormlabsのSLA用素材「Tough Resin ファミリー」を取り上げます。その名前の通り、高い強度や靭性を備え、機構部品や治具、筐体など幅広い用途に活用できる“タフ”な材料です。
2026年10月時点でのラインアップは「Tough 1000 Resin V1」「Tough 1500 Resin V2」「Tough 2000 Resin V2」の3種類。同じToughシリーズでも、それぞれ得意とする特性は異なります。公式データを参照しながら、造形した試作品を通して3種類の違いや選び方を見ていきましょう。

FormlabsのSLA方式3Dプリンタ「Form 4」シリーズ(Form 4 / Form 4B / Form 4L / Form 4BL)で使用できる、3種類のTough Resin。機械的な強度や靭性が求められる部品に適した材料で、それぞれ異なる熱可塑性プラスチックに近い特性を持っています。また、新製品としてForm Studio 1でもTough 1500 V2を使用することができます。
Tough 1000 Resin V1はHDPE(高密度ポリエチレン)やデルリン(POM)、Tough 1500 Resin V2はPP(ポリプロピレン)、Tough 2000 Resin V2はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)に匹敵する機械的特性を持つ材料として位置づけられています。
材料 | Tough 1000 Resin | Tough 1500 Resin | Tough 2000 Resin |
主な特徴 | シリーズで最も靭性と延性に優れた材料 | 剛性とコンプライアンスの優れたバランス | シリーズで最も高強度・高剛性の材料 |
匹敵する熱可塑性プラスチック | HDPE デルリン(POM) | PP | ABS |
推奨用途 | 耐衝撃性を備えた治具・固定具、部品、スクイーズ可能な試作品 低摩擦アセンブリ(ギア、ボールジョイントなど) | ラッチ、フレクシャー、ダンパーのようなコンプライアント機構のために剛性と靭性が求められる部品 留め具・バックル、セルフタッピングねじ用ボス、ヒンジ | 頑丈な治具・固定具、保護シェル、スナップフィットエンクロージャ、耐熱・耐クリープ性が求められる部品 |
それぞれの特徴と、特性の近い熱可塑性プラスチック、推奨用途をまとめたものがこちらの表(Formlabsの情報を参照)。大まかにまとめると、曲げや衝撃に対して粘り強いTough 1000 V1、剛性としなやかさを両立したTough 1500 V2、高い強度と剛性を持つTough 2000 V2、という整理ができそうです。
同じ「Tough」の名前を持つ3種類ですが、それぞれ得意とする使い方が異なります。実際の用途や試作品も交えながら、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
よく曲がるのに割れにくい、靭性トップの「Tough 1000 Resin V1」

Tough 1000 Resin V1は、Toughシリーズの中で最も靭性と延性に優れた、曲げや衝撃に対して粘り強い材料です。HDPE(高密度ポリエチレン)に匹敵する強度・剛性・靭性を備え、耐摩耗性や耐疲労性にも優れています。曲げや屈曲、衝撃を繰り返し受ける部品など、破損しにくさが求められる用途に適しています。
Formlabsの紹介動画では、強い衝撃を加えても簡単には破断せず、切断した際にも切り屑が飛び散りにくい様子が紹介されています。強い力を入れてもパキッと割れるのではなく、白く変色しながら粘るように変形する様子からも、Tough 1000 Resin V1ならではの靭性がうかがえます。
また、フタとカップをつなぐ薄肉部を繰り返し曲げる様子も紹介されています。さらに、摩耗や繰り返し応力に強い特性を活かし、ギアやボールジョイントなどの可動部品、繰り返しはめ合わせるケースなどの作例も紹介されています。
iPhoneケースで、しなやかさをチェック


こちらはTough 1000 Resin V1で造形したiPhoneケースです。
実際に触ってみると、そのしなやかさが印象に残ります。薄肉部分を大きく反り返らせても破断せず、手を離すと元の形に戻ります。硬いiPhone本体に対しても、ケースの縁をしならせながらパチン、パチンとはめ込むことができました。
丈夫だけど、力が加わったときには粘り強く変形する。Tough 1000の特徴が、iPhoneケースの着脱でもわかりやすく感じられました。
剛性と柔軟性のバランス型、復元力に優れた「Tough 1500 Resin V2」

Tough 1500 Resin V2は、軽くしなやかで、荷重に応じて曲がりながら元の形に戻る復元力が特徴のレジン。PP(ポリプロピレン)に匹敵する強度と硬さを持ち、スナップフィットやヒンジなどの繰り返したわむ機構部品や、セルフタッピングねじ用ボスに適しています。治具や固定具など、適度な剛性としなやかさの両方が求められる用途でも活躍します。Form Studio 1でも使用可能
機構部品としての強度や復元力をチェック

こちらはTough 1500 Resin V2で造形した2つの部品です。土台側にめねじ、チューブ側におねじをモデリングしており、造形したパーツ同士をそのままねじ込んで組み合わせることができました。
直径約3mmの穴を設けた土台は、M3ねじを締め込んでも割れや欠けが生じることなく、木材に固定できました。また、平面部に電動ドリルで穴を開けても、周囲が割れることはありませんでした。

厚さ1mmで造形したチューブにも、Tough 1500 Resin V2らしい特徴が見られました。指で押し込むと大きく凹みますが、力を抜くと元の形状へ戻ります。
今回は繰り返し回数を定めた耐久試験までは行っていませんが、変形を受け止めながら形状を復元する性質を確認できました。こうした特徴は、スナップフィットやクリップなど、曲げや変形を前提とした機構の設計にも活かせそうです。
シリーズで最も高強度・高剛性、マットな質感の「Tough 2000 Resin V2」

Tough 2000 Resin V2は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)に匹敵する強度と剛性を備えた、Toughシリーズの中で最も高強度・高剛性の材料です。靭性に加えて耐熱性や耐クリープ性も備えており、変形を抑えながら、しっかりと形状を保ちたい用途に向いています。産業機器や電子機器を衝撃や水、塵、熱などから守る堅牢な筐体やカバー、頑丈な治具・固定具などにも適しています。
ハンマーで叩いて、頑丈さをチェック

Tough 2000 Resin V2で造形したパーツで、その頑丈さを確かめてみました。Tough 1500と同様、M3ねじを締め込んでも割れや欠けは見られません。また、チューブを土台に固定した状態で500mLのペットボトルを吊り下げても、問題なく支えることができました。

続いて、Tough 2000 Resin V2で造形したiPhoneケースに、金属製のハンマーで強い衝撃を加えてみました。平坦な面だけでなく、カメラ周辺の細い部分を叩いても、今回の試験では折れや破損は見られませんでした。
容易には変形しない高い剛性を持ちながら、強い衝撃にも耐える頑丈さ。Tough 2000 Resin V2の特徴を、実際の造形物でも体感できました。
Toughシリーズの選び方
各素材を試した印象をまとめると、しなやかさと粘り強さが必要ならTough 1000、適度な剛性と元に戻る性質が必要ならTough 1500、変形を抑えてしっかり形を保ちたいならTough 2000、という選び方ができそうです。
ヒンジやしなる部品、治具・固定具、筐体など、用途によって求められる「タフさ」は異なります。単純に数字の大きいTough 2000が上位というわけではなく、どの程度しならせたいのか、どの程度形状を保ちたいのかといった用途に応じて素材を選ぶとよいでしょう。


また、同じ黒色系統の材料でも、並べてみると見た目や表面の質感にも違いがありました。
上の写真は、左からTough 1000、1500、2000の順で造形したiPhoneケースです。
Tough 1000は比較的ツルッとした表面で、薄い部分では光の透過も見られます。Tough 1500と2000は深いグレーに近い印象で、なかでも2000はよりマットな質感でした。

上からTough 1000、1500、2000と並べたチューブ状のパーツでも、質感の違いが見て取れます。1000は比較的ツルッとした印象、2000はマットで、1500はその中間に近い質感です。
特に薄肉の部品では見え方の違いも出やすいため、造形物が人の目に触れる場合や、直接手に取って使う製品では、こうした色や質感も素材選びのポイントになるでしょう。
まとめ
今回は、FormlabsのTough Resinシリーズ3種類を、公式情報と実際の造形物をもとに比較しました。
同じToughシリーズでも、よく曲がり粘り強いTough 1000、剛性と柔軟性のバランスに優れたTough 1500、高い強度と剛性を持つTough 2000と、それぞれ異なる特徴があります。
「一番強い素材」を選ぶというよりも、どの程度曲げたいのか、形状をしっかり保ちたいのか、繰り返し荷重がかかるのかなど、部品に求める性質から素材を選ぶことがポイントです。
YAMでは、それぞれの特性を活かした試作開発や最終用途部品の製作に対応しています。用途に合わせた素材選定や、造形テスト・サンプルの取り寄せも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
執筆:Yoshihiro Asano



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